2017年2月4日〜11日、長野県長野市権堂町にある築120年、国内最古級の映画館である長野松竹相生座ロキシーにて行われたプロジェクションマッピング「あいおい会い追い善光寺さん」。

まず、観光家の陸奥賢により綿密なリサーチが行われ、善光寺、相生座にまつわる昔の伝説から現代に生きる市民の思い出まで様々なエピソードを収集。それらを基に池亜佐美がアニメーションと音楽を製作。伝説も実話も思い出も、全てがごちゃ混ぜになり共に門前町を行進する群像アニメーション。長野県立信濃美術館によって企画された門前映像祭内の1プログラムとして、期間内日没後に投影を行った。

門前映像祭は、日本でアニメが上映されてから100周年を迎える2017年、県信濃美術館の開館50周年と長野相生座・ロキシーを運営する長野映画興業の創業100周年の節目に重なったことから企画された。

 

門前映像祭予告映像

 

 

あいおい会い追い善光寺さん 記録映像

 

相生座正面に本編の映像、建物横の壁に、本編中に登場するキャラクターの解説が投影された。歌の内容は、陸奥さんの提唱していた「うろ覚え」「伝説の口述による歪み」などの、人の持つ曖昧な部分を肯定してゆく思想を基に、様々なエピソードを組み合わせ構成。

以下、歌詞とその解説

 

1

うしにひかれて・・・

牛にひかれて 善光寺 みんなが知ってる いいつたえ

だけどその牛向かった場所は 門前町の相生座

映画のたのしさ 教えてくれた あいおいあいおい 相生座

 

このアニメーションは「牛に引かれて善光寺」という善光寺にまつわる伝承の中でも最も有名なものが導入になっている。今回は、もしもその牛が行った先が善光寺ではなく相生座だったら・・・?という仮定を主軸に展開をしている。

「牛に引かれて善光寺参り」とは・・

けちで信心のないおばあさんが、洗濯物を干していたところ牛が布をひっかけたまま走ってしまい、追いかけた先に着いたのが善光寺でした。牛を追うまま入ったお堂で、すっかり日も暮れたころ、地面におちた牛のよだれがお堂の光に照らされて

「牛とのみ思いすごすな仏の道に 汝を導く己の心を」

と読めました。それからすっかりおばあさんは信心深くなり、善光寺参りを続けて大往生をとげました。そのときの牛は、実は小諸の布引観音様だったのでした。

 

2

ちょいと足をケガしてさ リハビリついでのお散歩よ

犬にひかれて 向かった場所は 門前町の相生座

映画が見たくて 通ってしまえば 足もよくなる 相生座

 

 

 

 

門前町でとても有名な老舗の洋傘専門店のご主人からのエピソードより引用。(実際に通ったのは善光寺)いまでも現役で洋傘を作られており、街の歴史にも非常に詳しい。

ナガラボ:三河屋洋傘専門店

 

3

牛引き犬引き人よんで 1人も家族も相生座

子供欲しくて向った先は 門前町の相生座

かがやく健さんあらわれた・・・

 

 

子供が欲しくて善光寺に「おこもり」参拝に行った女性が、境内で雑魚寝をしていると夢枕に仏が現れ子を授かった、、の真相とは。事実と記憶のおおらかさが新たな伝承を産んでゆく。この「あいおい会い追い〜」の中では、子供が欲しい女性が映画で「健さん」をみて色めきだち子供を授かる。「健さん」は、高倉健のこと。門前町と深く心の関わりのあるスターであり、いく先々の蕎麦屋にサインが飾られていた。

 

 

4

わたしのことはほっとけと 箱から出ないよ箱娘

そのまま連れて行かれた場所は 門前町の相生座

龍が出た こわいなこわいな ほんとに 出た

箱から出てきた娘はたちまち 釣鐘姿に早変わり

龍に引かれて善光寺

あいおい会い追い 相生座 あいおい会い追い 相生座・・

 

 

 

 

「箱娘」とは、リサーチからのエピソードで中学生のころ引きこもりであった女の子が、相生座に通い沢山の映画鑑賞を通して新たな目標を見つけたという実際のエピソードより。善光寺の釣鐘の伝承と、平安時代の阿闍梨池伝説が複合された内容に。

最後は龍に連れられ相生座から善光寺へと旅立ってゆく。

相生座、善光寺を中心に、いろんなエピソードや伝説たちが出会い、追いかけることで

「あいおい会い追い善光寺さん」は出来あがった。

 

 

アニメーションは時間も時代も自由に交錯することができる。キャラクタの造形は、時代がわかる服などのディティールがあまり目立たないよう、まざりあえるように、極力かたちで見えてくるように、石ころがごろごろ転がっているように見えるよう心掛けた。

 

そのほか解説映像はこちら。映像の中で歩いているものはすべて、なにかしらのエピソードや周辺人物に由来している。

 

 

 

雪の降りしきるなか、様々な時代を生きるものものが一同に介し、アニメーション、並びに長野映画興行の100周年をお祝いを行った。

 

 

 

アニメーション・音楽

池亜佐美

リサーチ・監修

陸奥賢

■むつさとしのブログ
http://mutsu-satoshi.com/

観光家/コモンズ・デザイナー/社会実験者。1978年大阪生まれ。2007年に堺のコミュニティ・ツーリズム企画で地域活性化ビジネスプラン「SAKAI賞」を受賞。「大阪七墓巡り復活プロジェクト」「まわしよみ新聞」「直観讀みブックマーカー」「当事者研究スゴロク」「歌垣風呂」「劇札」などを手掛ける。應典院寺町倶楽部専門委員。著書に『まわしよみ新聞のすゝめ』。

プロデューサー

松井正(長野県信濃美術館)

土居伸彰(ニューディアー)

http://www.hokurikushinkansen-navi.jp/pc/news/article.php?id=NEWS0000009615